現代語訳
鍋を二つ並べ、二つの鍋とも湯をこの上なく湯玉の立つほど沸かしておく。切った豆腐を網杓子ですくい、一方の鍋へ網杓子ごと浸すだけで、すぐに温めておいた器によそい、もう一方の鍋の湯を注ぎ入れて出す。煮るまでもなく、煮加減はこの上なくよい。何十人に出しても、はじめから終わりまで煮加減は少しも変わらない。
汁は、醤油一升・酒三合・だし汁五合を一緒に煮返し、別の中猪口に入れる。おろし大根・唐辛子の粉・葱白のみじん切り・陳皮の細かい粉・浅草海苔を薬味に使う。あるいは胡椒一品だけでもよい。
切り方は、心太(ところてん)の突き出しの先の網を細い糸で作り、温かい湯の中へ向けて突き出す。その突き出す手もとまで湯につかるようにする。何百人に出すときも、すぐに切り出せる。
薄刃で切り出すときは、まずほどよく粗切りをし、左の方を左の掌で押さえ、左の方から右の方へ向けて切ってゆく。ほどよく切ったら、左の掌と薄刃とでそっとはさんで返し、また始めのように切ってゆく。切る間は、ひたすら薄刃を水につけながら切ってゆく。これがすべて豆腐を切る術である。一説に、薄刃に酢を少しひくのもよい。
現代語訳に基づくレシピ
| 材料 | 豆腐、醤油(一升)、酒(三合)、だし汁(五合)、大根、唐辛子、葱、陳皮、浅草海苔 |
|---|---|
| ①二つの鍋に湯 | 鍋を二つ並べ、どちらも湯玉の立つほど沸かす。 |
| ②細く突き出す | 心太突きの先を細い糸の網にして、湯の中へ豆腐を突き出す。 |
| ③ひたしてすぐ器へ | 網杓子ですくって一方の鍋にひたすだけで、温めた器に盛る。 |
| ④もう一方の湯を注ぐ | もう一方の鍋の湯を注ぎ、つけ汁と薬味を添える。 |
| ポイント | 煮ずに湯にくぐらせるだけなので、何十人分でも加減が変わらないのが要点。包丁で細く切る方法と、心太突きで突き出す方法の両方を詳しく書いている。第17品・第47品・第92品・第98品がこのうどん豆腐を使う。 |
図の番号は、上の表の①〜④に対応する。
豆腐を切る術
原文は、包丁(薄刃)で細く切るこつを詳しく書き、「これがすべて豆腐を切る術である」と結んでいる。薄刃を水につけながら切ること、酢を少しひいてもよいことまで添えてある。
うどん豆腐を使う品
第17品「ぶつかけ温飩とうふ」・第47品「薯蕷かけ豆腐」・第92品「別山焼」・第98品「雪消飯」が、このうどん豆腐を使っている。
原文(翻刻)
右の「百」から読み、左へ続く
鍋ふたつをならべ二なべとも湯を最よく湯玉のたつほど沸しをき切たる豆腐を羅匕にてすくひ一方の鍋へ羅匕ながらつけひたしたるまでにて直にあたゝめをきたる器へよそひ今一方の鍋の湯をそゝぎ入れ出す也烹るにおよばずして烹調最妙なり幾数十人に供すといふとも始終烹調少しもかわらず○汁は豆油壱升酒三合だし汁五合ひとつに煮かへし別の中ちよくに入れ擦し大根辣茄の末葱白の微塵剉み陳皮の細末浅草紫菜を加料に用ゆ○或は胡椒一品にてもよし
○切やうは凝菜のつき出しさきの羅を細糸にて造へ温湯の中へむけてつき出すなり尤其つき出す手もとまで湯へつかるやうにすべし幾百人に供ずといふとも即時に切いだすべし
○うす刃にて切いだすはまづよきほどにあら切をし左の方を左の掌にておさへ左の方より右の方へむけてきりゆくなりよきほどにきりて左の掌とうす刃とにてそつとはさみうちかへして又始の如くきりゆく切る中にひたものうす刃を水につけ〳〵してきりゆく也是すべて豆腐をきるの術なり○一説にうす刃に酢を少しひくもよし
原本(jpg)で読んだ。字体は通行の字体に改め、振り仮名は省いた(「羅匕」はあみじやくし、「烹調」はにかげん、「豆油」はしやうゆ、「中ちよく」はなかちよく、「辣茄」はたうがらし、「陳皮」はちんぴ、「浅草紫菜」はあさくさのり、「凝菜」はところてん、「細糸」はほそいと、「掌」はてのひら)。本品のあとに後書き「豆盧子柔伝」が続くが、ここでは本文のみを載せた。コマ036の左ページから、丁をめくったコマ037の右ページへ続く。
ほえまるより
案内人:ほえまる
二つの鍋でさっとくぐらせるだけ。何十人分でも同じおいしさ。百品の最後にふさわしい、見事な技だワン!