♨️ 湯豆腐葛湯最第一
現代語訳
八、九分の大きな賽の目に切るか、または拍子木豆腐といって五、七分角・長さ一寸二、三分(3.6〜3.9センチほど)の大きさに切っておく。
葛湯をこの上なく湯玉の立つほど沸き立たせ、豆腐を一人分入れ、蓋をせずに見ていて、少し動き出して今にも浮き上がろうとするところをすくい上げて盛る。すでに浮き上がってしまえば、もう煮加減はよくない。その加減は秘訣にある。もちろん器は温めておく。
生醤油を沸かし、花鰹を入れて湯を少しさし、もう一度沸かして絹で漉し、別の猪口に入れる。葱白のざくざく切り・おろし大根・唐辛子の粉を入れる。
京都ではこれをただ「湯とうふ」といい、浪華(大坂)では「湯やつこ」という。豆腐の料理のなかで、もっとも第一の品であろう。古い作り方では甜水(真水)で煮るとあるが、葛湯には及ばない。
現代語訳に基づくレシピ
| 材料 | 豆腐、葛、生醤油、花鰹、葱、大根、唐辛子 |
|---|---|
| ①大きく切る | 豆腐を大きな賽の目か、拍子木形に切る。 |
| ②葛湯に一人分 | 湯玉の立つほど沸かした葛湯に、一人分を入れる。蓋はしない。 |
| ③浮く寸前にすくう | 少し動いて浮き上がろうとするところをすくい、温めた器に盛る。 |
| ④つけ汁と薬味 | 花鰹を入れた煮返し醤油を猪口に入れ、葱・大根おろし・唐辛子を添える。 |
| ポイント | 浮き上がってからでは遅く、浮き上がる寸前にすくうのが要点。真水より葛湯がよいとし、本文みずから「豆腐料理の第一」と言い切っている。第81品・第94品が、この煮加減を手本にしている。 |
図の番号は、上の表の①〜④に対応する。
京の湯とうふ、浪華の湯やつこ
原文は、同じ料理を京都では「湯とうふ」、大坂では「湯やつこ」と呼ぶと伝える。第81品「真の八杯とうふ」と第94品「油煠ながし」は、「湯やつこの如し」としてこの煮加減を参照している。
原文(翻刻)
右の「九十七」から読み、左へ続く
九十七 湯やつこ
八九分の大骰に切か又は拍子木豆腐とて五七分の方長さ壱寸二三分の大きさに切をき○葛湯を至極ゆだまのたつほど沸たゝし豆腐を壱人分入れ蓋をせず見てゐて少うごきいでゝまさにうきあがらんとするところをすくひあげもる也既にうきあがればはや烹調よろしからず其あんばい諦的にあり尤器をあたゝめおくべし○生醤油を沸し花がつほをうちこみ湯を少しばかりさし又一へん沸し絹ごしにして別猪口に入れ葱白のざく〳〵おろし蘿蔔辣茄の末入る○京都にて是をたゞ湯とうふといふ浪華にて湯やつこといふ菽乳の調和において最第一品たるべし
○古法は甜水にて烹るとあれども葛湯にはしかず
八九分の大骰に切か又は拍子木豆腐とて五七分の方長さ壱寸二三分の大きさに切をき○葛湯を至極ゆだまのたつほど沸たゝし豆腐を壱人分入れ蓋をせず見てゐて少うごきいでゝまさにうきあがらんとするところをすくひあげもる也既にうきあがればはや烹調よろしからず其あんばい諦的にあり尤器をあたゝめおくべし○生醤油を沸し花がつほをうちこみ湯を少しばかりさし又一へん沸し絹ごしにして別猪口に入れ葱白のざく〳〵おろし蘿蔔辣茄の末入る○京都にて是をたゞ湯とうふといふ浪華にて湯やつこといふ菽乳の調和において最第一品たるべし
○古法は甜水にて烹るとあれども葛湯にはしかず
原本(jpg)で読んだ。字体は通行の字体に改め、振り仮名は省いた(「大骰」はおほさい、「拍子木」はひやうしぎ、「沸たゝし」はにえたゝし、「烹調」はにかげん、「諦的」はたいてき、「猪口」はちよく、「蘿蔔」はだいこん、「辣茄」はたうがらし、「浪華」はなには、「甜水」はまみづ)。コマ034の左ページの終わりから、丁をめくったコマ035の右ページへ続く。
ほえまるより
案内人:ほえまる
浮き上がる寸前の一瞬をすくう。シンプルだからこそ難しい、豆腐料理の一番だワン!