第77品「真のケンチヱン」現代語訳
豆腐一丁を十二ほどに切り、油でさっと揚げ、一つを二枚に割って細く切る。栗と皮牛蒡は針のように細く切る。木耳(きくらげ)と麩も細く切る。芹はみじんに刻む。芹のないときは青菜を使う。銀杏は二つ割りにする。
この七品を合わせて、およそ一升ほどのかさに、油一合あまりの分量とする。油をよく煮立て、まず銀杏・牛蒡・芹を入れて炒めつけ、次に木耳・麩・豆腐・栗を入れ、何度もひっくり返しながら醤油で味をつけ、冷ましておく。
湯葉を水に浸して板に広げ、七品の具を厚さ四、五分(1.2〜1.5cm)にまんべんなく敷き並べ、よく巻きつけて、干瓢(かんぴょう)でくくる。巻き終わりの口に、葛粉を水でかたく溶いたものを塗りつけてもよい。油でよく揚げ、七、八分(2〜2.4cm)ずつに切る。豆腐は合わせて三度油で揚げることになる。ケンチヱン酢で食べる。
ケンチヱン酢の作り方:上等の厳酢(強い酢)と醤油を同じ量合わせ、生姜をしぼって多めに入れ、絹で漉して使う。
第77品「真のケンチヱン」レシピ
| 材料 | 豆腐、栗、皮牛蒡、木耳、麩、芹(なければ青菜)、銀杏、油、醤油、湯葉、干瓢、(ケンチヱン酢)酢・醤油・生姜 |
|---|---|
| ①豆腐を揚げて細く切る | 豆腐一丁を十二ほどに切って油でさっと揚げ、二枚に割って細く切る。 |
| ②具と炒めて味をつける | 栗・牛蒡・木耳・麩・芹・銀杏と豆腐を、煮立てた油で炒め、醤油で味をつけて冷ます。 |
| ③湯葉で巻く | 水に浸した湯葉に具を厚さ四、五分に敷き、巻いて干瓢でくくる。 |
| ④揚げて切る | 油でよく揚げ、七、八分ずつに切る。ケンチヱン酢で食べる。 |
| ポイント | 具は七品を合わせて約一升、油は一合あまりと、分量まで書かれている。豆腐は「三度揚げる」とあるが、本文で揚げる場面は二度(最初と巻いた後)で、三度目がどこかは書かれていない。 |
図の番号は、上の表の①〜④に対応する。
第8品「草のケンチヱン」現代語訳
もう一つの作り方がある。右の六品の具を油で炒りつけ、すった豆腐に混ぜる。湯葉は油を使わず、生の湯葉で巻いてくくり、醤油と酒塩で味をつける。これが草のケンチヱンである。
第8品「草のケンチヱン」ポイント
| 差分 | 豆腐は細切りにせず、すって具と混ぜる。巻いたものを揚げず、醤油と酒塩で煮て味をつける。 |
|---|---|
| 「真」と「草」 | 書道の楷書・草書になぞらえ、きちんとした作り方を「真」、略式を「草」と呼ぶ。第7品「草の八杯とうふ」と第81品「真の八杯とうふ」と同じ関係。 |
| 本文の位置 | 第8品(尋常品)の見出しには「真のケンチヱンの下に出たり」とあり、作り方は第77品の本文の中(▲印の二段目)にある。 |
「ケンチヱン」という名
今の「けんちん(巻繊)」と同じ系統の名で、細く刻んだ具を炒めて湯葉で巻く料理を指す。名前の由来は原文に書かれていない。
原文(翻刻)
右の「七十七」から読み、左へ続く。左の二つめの▲が第8品
壱挺を十二ほどに切油にてさつと煠げ壱つを二片にわりて細くきり○栗子皮牛蒡を針にきり○木耳麪筋細くきり○芹みぢんに剉みもし芹なきときは青菜を用ゆ○銀杏ふたつわりにし七品合て大約壱升ばかりのかさに油一合あまりの分量にて油よく沸せ先銀杏牛蒡芹を入れ炒つけ次に木耳ふ豆腐くりを入復うちかへし〳〵して豆油にて味つけさまし置○腐衣を水に浸し板にひろげ七品の料をあつさ四五分まんべんにしきならべよく巻つけ干瓢にてくゝり○又巻とめ口に葛粉水にてかたく溲たるをぬりつくるもよし油にてよく煠げ七八分づゝに切る尤も豆腐は油にて三次煠るなり○ケンチヱン醋にて用ゆ
▲ケンチヱン醋の方 上々の厳醋豆油と等分にしてしぼり老姜おほく入れ絹ごしにして用ゆ
▲又一製あり右六品の加料を油にていりつけすり豆腐に糝て腐皮は油を用ひず生の腐皮に巻くゝりて醤油と酒しほにて味つくる也是草のケンチヱンなり
原本(jpg)で読んだ。字体は通行の字体に改め、振り仮名は省いた(「麪筋」はふ、「大約」はおほよそ、「豆油」はしやうゆ、「腐衣」「腐皮」はゆば、「老姜」はしやうが)。コマ028の左ページから、丁をめくったコマ029の右ページへ続く。
ほえまるより
案内人:ほえまる
湯葉でくるくる巻いて揚げる、ごちそうのけんちんだワン。揚げずに煮るのが「草」、略式でもおいしそうだワン。