尋常品

木の芽田楽

きのめでんがく

『豆腐百珍』天明二年(1782年) 尋常品 第1品

木の芽田楽
🍢 田楽木の芽味噌田楽炉の図

温かい湯を大きな盤(たらい)にたたえ、豆腐を切るのも串に刺すのも、その湯の中でする。やわらかい豆腐でも、崩れ落ちる心配がない。湯から引き上げたら、すぐに火にかける。

味噌に木の芽を入れるのはもちろんである。醴(あまざけ)を味噌の二割ほど入れてすり混ぜると、なおよい。多く入れると甘すぎて、かえってよくない。

材料豆腐、味噌、木の芽、醴(甘酒)
①湯の中で切る大きな盤に温かい湯を張り、その中で豆腐を切る。
②湯の中で串に刺す切った豆腐を、湯に沈めたまま串に刺す。やわらかい豆腐でも崩れない。
③すぐに焼く湯から引き上げて、すぐ火にかける。
④木の芽味噌を塗る味噌に木の芽をすり混ぜる。甘酒を味噌の二割ほど加えるとよい。入れすぎると甘すぎる。焼いた豆腐に塗る。
ポイント豆腐の種類、味噌の種類、焼き加減は原文に書かれていない。甘酒の箇所は一部の字が読めない(原文欄の〓)。
木の芽田楽の作り方。①湯の中で切る ②湯の中で串に刺す ③すぐに焼く ④木の芽味噌を塗る

図の番号は、上の表の①〜④に対応する。

豆腐百珍の原本。木の芽田楽の項
原本(コマ011)。
右の「一」から読む
一 木の芽田楽
温湯を大盤に湛へ切るも串にさすも其湯の中にてする也やはらかなる豆腐にても危くおつるなどのうれへなし湯よりひきあげすぐに火にかくる也○味噌に木の目勿論なり醴の〓さ入れを二分どほり〓〓にすりまぜれば尤佳し多く入れば甘すぎて却てよろしからず

原本(jpg)で読んだ。字体は通行の字体に改め、振り仮名は省いた(「醴」はあまざけ)。〓は読めなかった字。

葛焼き:田楽にもなる葛菓子(古今名物御前菓子秘伝抄)——享保三年の菓子書にも「田楽にも仕立てる」「山椒味噌をつけて焼く」とある。豆腐でなく葛で作る田楽。

案内人の柴犬ほえまる

案内人:ほえまる

百品のいちばん最初は木の芽田楽だワン。湯の中で切れば崩れない、という一工夫から始まるのがいいワン。座敷で焼く田楽炉まで図で載せているのは、本気の田楽好きだワン!

原本では、木の芽田楽のすぐ後に、図入りで新しい田楽炉の紹介が続く。作り方ではなく、座敷で客の前で田楽を焼くための道具の話である。

豆腐百珍の原本。田楽炉の図と説明
原本(コマ012)。上が炉と木の槽の図、中ほどが穴の開いた炉の底の図

近ごろ、田楽炉の新しいものが出ている。長さ二尺(約60cm)あまり、幅二寸五〜七分(約8cm)、深さ二寸(約6cm)あまりの四角い焼き物で、表に釉薬をかけて焼いてある。底には図のように、大きさ六、七分(約2cm)の穴をたくさん開ける。

これを木の槽(ふね)に入れ子にする。槽の深さは四、五寸(約12〜15cm)。槽の中に受けがあって、炉は上から一寸(約3cm)ほどのところに掛かる。炭火には灰を置かず、槽に水を入れて火の勢いを助ける。炉と槽は二組こしらえておき、水が温まったら冷たい水に取り替えるとよい。水が温まると、かえって火の勢いを助けなくなる。炉も槽も銅で作ったものもある。

田楽を座敷で焼いて、客をもてなすためのものである。そのときも、うちわであおぐことをせずに火の勢いが強く、灰が立つなどの障りもない。

近江(江州)の目川と、京の北・今宮の砂田楽は、続編に出す。

近来田楽爐の新製あり長さ二尺あまり濶二寸五七分深さ二寸あまりの方の陶也表へくすりかけやきたる也底は[図]かくの如く大さ六七分の孔を数多あけ木の槽に入子にし槽の深さ四五寸趾は〓〓〓中にとまりありて爐は上壱寸ほどのところにかゝりあり炭火〓〓灰をおかず槽に水を入れて火気を助る也尤も爐槽ともに二くみこしらへをき水温れば冷水にとりかへべし水あたゝかなればかへつて火気を助け〓なり又爐槽ともに銅にてこしらへたるもあり田楽を坐席にてやく客への馳走也其〓〓などうちはにてあふぐことをせず火気さかんにして灰だつ〓〓いふさはりなし○江州目川京北今宮の沙田楽続編に出

原本(jpg)で読んだ。振り仮名は省いた(「濶」ははば、「槽」はふね)。〓は読めなかった字。脚の形、炭火の扱い、うちわの前後など数か所が読めないので、訳はその前後から分かる範囲にとどめた。