現代語訳
まず「ふるめんと(fermento・酵母)」を作る。うどんの粉1升を甘酒でこねて柔らかくして一夜置くとよく膨らむ。甘酒は常の麹5合を合わせ程にして少し泡立つ頃合いのときに濾してこねる。次にうどんの粉1斗に砂糖640匁(約2.4kg)とふるめんとを入れ、水でこねる。丸パンでも平パンでも好み次第に作り、膨らんだら窯で焼く。窯は上方4尺4方ほど、高さは外5尺・内3尺ほどで、石や瓦の割れを入れて土を塗り重ねて築く。薪2束ほど焚いて燠(おき)をかき出し、濡らした藁箒で掃いてパンを並べて口をふさいで焼く。
現代語訳に基づくレシピ
| 材料 | 小麦粉(うどんの粉、合計約1斗1升)、砂糖(六百四十匁・約2.4kg)、甘酒(ふるめんと用) |
|---|---|
| ①ふるめんと(発酵種)を作る | 小麦粉一升を甘酒でこね、できるだけ柔らかくこねて一晩置くとよく膨らむ。甘酒は通常の麹五合を合わせ、少し泡立ってきたら笊で漉してからこねる。 |
| ②生地をこねる | 小麦粉一斗に砂糖六百四十匁(約2.4kg)とふるめんとを入れ、水でよい加減にこねる。丸くても平たくても好みの形に作り、箱の蓋に並べて置くと膨らむ。夏は二〜四時間、冬は遅い。 |
| ③窯を築く | 上部は四尺四方、高さは外五尺・内三尺ほど。石や瓦の割れを混ぜて練り塀のように塗り、上へ行くほど細く、天井の合わせ目は平石で塞ぐ。外側を二、三度上塗りし、側面の土は七、八寸の厚さに塗る。口は一尺五寸四方。 |
| ④焼く | 薪二束ほどを焚いて熾をかき出し、水で湿らせた藁箒で灰を掃いてから生地を並べる。窯の口を莚や菰で塞ぎ、少し開けて具合を見ながら入れ替えて焼く。飯を二釜炊くほどの間に小麦粉一斗分を焼き上げる。 |
| 備考 | 甘酒で種を起こす酒種法は21番「饅頭」・22番「甘酒」と共通する。 |
現代の逸品
準備中です。お楽しみに!
原材料を探す
このレシピの原材料を楽天市場で探せます。
※楽天アフィリエイトを利用しています。
原文(翻刻)
〓は底本で判読できない字です。
補足
甘酒で「ふるめん」という種を起こし、小麦粉と砂糖に混ぜて発酵させる。現代のあんぱんに使われる酒種と同じ系統の技術です。
そして本項の特異さは、菓子そのものより窯にあります。高さ五尺、口は一尺五寸四方。石や瓦の割れを混ぜて練り塀のように塗り上げ、天井の合わせ目には平石を置く。薪を焚いて熾をかき出し、藁箒を水で湿らせて灰を掃き出してから生地を並べる。
この時代、パン焼きかまどをここまで具体的に記した書物は他に見当たらないとされています。菓子の製法書に、建築の手順がそのまま書き残されました。
ほえまるより
案内人:ほえまる
江戸時代にパンのレシピが載っている!「ふるめんと」はポルトガル語の「fermento(発酵)」——つまり本格的な酵母発酵パンだワン。窯の作り方まで詳しく書いてある徹底ぶりにほえ〜!南蛮文化が江戸の菓子にまで影響を与えていたワン!