現代語訳
小麦粉1升に白砂糖2合を加え、水でこねて柔らかくもみ、うどんのように伸ばす。小さな丸い型を車のように回転させながら型を押し当て、色々な形に切り、銅鍋に入れて蓋をして上下から火をかけて焼く。下火を上火より強くする。
現代語訳に基づくレシピ
| 材料 | 小麦粉(1升)、白砂糖(2合)、水(適量) |
|---|---|
| ①生地をこねる | 小麦粉1升に白砂糖2合を加え、水でこねて柔らかくもむ。材料はたった3つ——卵も牛乳もバターも使わない。現代のクッキーとは全く異なる、素朴な生地。 |
| ②うどんのように伸ばす | 生地をうどんのように薄く伸ばす。「うどんのように」という表現が江戸らしい。 |
| ③型で抜く | 小さな丸い型を「車のように回転させながら」押し当て、色々な形に切る。ピザカッターのような道具を想像するとわかりやすい。 |
| ④上下から火をかけて焼く | 銅鍋に入れて蓋をし、上下から火をかけて焼く。カステラ(10番)と同じ「天火焼き」の技法。 |
| ⑤火加減 | 「下火を上火より強くする」——カステラと全く同じ火加減の指示。底をしっかり焼いて、上面は焦がさない。南蛮焼き菓子に共通する基本原則。 |
カステラとボーロ——南蛮菓子の兄弟
第10番のカステラと第11番のボーロは、並べてみると面白い対比が見えてきます。
| カステラ(10番) | |
| 主材料 | 卵50個・砂糖・小麦粉 |
| 特徴 | 卵たっぷり、しっとり |
| ボーロ(11番) | |
| 主材料 | 小麦粉・砂糖・水のみ |
| 特徴 | 卵なし、硬い焼き菓子 |
実は、ポルトガルでは元々「カスティーリャ・ボーロ」(カスティーリャ王国のお菓子)と呼ばれていた一つのお菓子が、日本に伝わった際に「カステラ」と「ボーロ」に分かれたという説があります。兄弟だったお菓子が、日本で別々の道を歩み始めたのかもしれません。
卵のないボーロが、現代の3系統に分かれるまで
秘伝抄のボーロには卵が入っていません。卵も重曹もない、硬いクッキーのような焼き菓子——これが日本のボーロの出発点でした。ここから300年かけて、大きく3つの系統に分かれていきます。
| 佐賀の丸ぼうろ | 小麦粉+砂糖に卵と蜂蜜を加え、しっとりした焼き菓子に進化。佐賀銘菓として全国的に有名。 |
|---|---|
| 京都の蕎麦ぼうろ | 小麦粉の一部を蕎麦粉に替え、花びらの形に成形。総本家河道屋の「蕎麦ほうる」が代表格。和菓子として独自進化。 |
| たまごボーロ | 馬鈴薯でんぷん+砂糖+卵+牛乳。原材料がもはや別物だが、名前だけが受け継がれている。赤ちゃんの定番おやつ。 |
卵なしの素朴な焼き菓子から、しっとりした丸ぼうろ、香ばしい蕎麦ぼうろ、口溶けの良いたまごボーロへ——同じ「ボーロ」の名を持ちながら、全く違うお菓子に育っていったのが面白いですね。
現代の逸品
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原文(翻刻)
ほえまるより
案内人:ほえまる
ポルトガル語の「Bolo(ボーロ)」が語源——でも実はポルトガル語では「お菓子」の総称で、特定のお菓子を指す言葉じゃないワン。秘伝抄のボーロは卵も重曹も入らない硬いクッキー。ここから佐賀の丸ぼうろ、京都の蕎麦ぼうろ、赤ちゃんのたまごボーロへと枝分かれしていく——300年の進化の出発点がこの素朴なレシピだったワン!
もう一つのボーロ
秘伝抄には第93番にも別のボーロが登場します。砂糖の比率が高く、よりクッキーに近い製法です。→ 第93番「ボーロ」(ほうろ・クッキー風)