🍬 南蛮菓子

ボーロ

ボーロ(はうる)

『古今名物御前菓子秘伝抄』享保三年(1718年) 第11番

ボーロ
🍬 南蛮菓子焼き菓子ポルトガル伝来

小麦粉1升に白砂糖2合を加え、水でこねて柔らかくもみ、うどんのように伸ばす。小さな丸い型を車のように回転させながら型を押し当て、色々な形に切り、銅鍋に入れて蓋をして上下から火をかけて焼く。下火を上火より強くする。

材料小麦粉(1升)、白砂糖(2合)、水(適量)
①生地をこねる小麦粉1升に白砂糖2合を加え、水でこねて柔らかくもむ。材料はたった3つ——卵も牛乳もバターも使わない。現代のクッキーとは全く異なる、素朴な生地。
②うどんのように伸ばす生地をうどんのように薄く伸ばす。「うどんのように」という表現が江戸らしい。
③型で抜く小さな丸い型を「車のように回転させながら」押し当て、色々な形に切る。ピザカッターのような道具を想像するとわかりやすい。
④上下から火をかけて焼く銅鍋に入れて蓋をし、上下から火をかけて焼く。カステラ(10番)と同じ「天火焼き」の技法。
⑤火加減「下火を上火より強くする」——カステラと全く同じ火加減の指示。底をしっかり焼いて、上面は焦がさない。南蛮焼き菓子に共通する基本原則。

第10番のカステラと第11番のボーロは、並べてみると面白い対比が見えてきます。

カステラ(10番)
主材料卵50個・砂糖・小麦粉
特徴卵たっぷり、しっとり
ボーロ(11番)
主材料小麦粉・砂糖・水のみ
特徴卵なし、硬い焼き菓子

実は、ポルトガルでは元々「カスティーリャ・ボーロ」(カスティーリャ王国のお菓子)と呼ばれていた一つのお菓子が、日本に伝わった際に「カステラ」と「ボーロ」に分かれたという説があります。兄弟だったお菓子が、日本で別々の道を歩み始めたのかもしれません。

秘伝抄のボーロには卵が入っていません。卵も重曹もない、硬いクッキーのような焼き菓子——これが日本のボーロの出発点でした。ここから300年かけて、大きく3つの系統に分かれていきます。

佐賀の丸ぼうろ小麦粉+砂糖に卵と蜂蜜を加え、しっとりした焼き菓子に進化。佐賀銘菓として全国的に有名。
京都の蕎麦ぼうろ小麦粉の一部を蕎麦粉に替え、花びらの形に成形。総本家河道屋の「蕎麦ほうる」が代表格。和菓子として独自進化。
たまごボーロ馬鈴薯でんぷん+砂糖+卵+牛乳。原材料がもはや別物だが、名前だけが受け継がれている。赤ちゃんの定番おやつ。

卵なしの素朴な焼き菓子から、しっとりした丸ぼうろ、香ばしい蕎麦ぼうろ、口溶けの良いたまごボーロへ——同じ「ボーロ」の名を持ちながら、全く違うお菓子に育っていったのが面白いですね。

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はうる小麦の粉壱升に白沙糖二合入水にてこねやはらかにもみうとんのことくのしちいさき丸きかねに車のやうにまはし候様に仕ゑを付て其かねを持て形色々に切銅なへに入かねのふたを仕上下に火を置てやき申候但し下の火下の火よりつよく置て能御座候
案内人の柴犬ほえまる

案内人:ほえまる

ポルトガル語の「Bolo(ボーロ)」が語源——でも実はポルトガル語では「お菓子」の総称で、特定のお菓子を指す言葉じゃないワン。秘伝抄のボーロは卵も重曹も入らない硬いクッキー。ここから佐賀の丸ぼうろ、京都の蕎麦ぼうろ、赤ちゃんのたまごボーロへと枝分かれしていく——300年の進化の出発点がこの素朴なレシピだったワン!

秘伝抄には第93番にも別のボーロが登場します。砂糖の比率が高く、よりクッキーに近い製法です。→ 第93番「ボーロ」(ほうろ・クッキー風)