「日本の布産を一通り見渡すに、奈良・薩摩・越後・能登・上布など国々の特産があるが、なかでも越後縮は日本一と誰しも認めている」──図会はそう断言する。十月から三月まで雪で家が埋まる厳しい豪雪地帯の越後(新潟)で、なぜ日本一の布が生まれたのか。雪が布を晒し、雪の水分が糸を湿らせて細く績むことができる。自然の厳しさが最高の品質を生み出す、逆説の名産がここにある。
越後国(新潟)は十月ごろから三月まで雪が家を埋め、大道の往来は屋根伝いに行くほどの豪雪地帯。この苛酷な自然条件が逆に最高の布を生む。
奈良・薩摩・越後・能登・上布など各地に名産があるが、越後縮は日本第一の評判を得ている。
原料の「苧麻(ちょま・からむし)」は土さえあればどこでも栽培できる。大麻は楓の葉のようで、苧麻は桐の葉に似て大きく、両者は生・乾・種ともまったく異なる植物。苧麻は生のうちに麻績(おみ)師が作業する。
苧引き(おびき)の工程:一尺ほどの束になった苧麻の皮を水に漬け、「苧引き小刀」の刃裏に引っ掛けて皮を剥ぎ、表裏に引いてさらに細く剥ぐ。これを「苧績(おうみ)」と呼び、各地の麻農家の女たちが夕暮れ時から夜にかけて行う仕事。細くて長い糸が得られるほど上等な布ができる。
紡ぎ:上手な者は「肺車(はいしゃ)」という糸車を使い、女一人の手力の三倍の仕事ができる。
染色:京都の染め方と変わらない。縞(しま)柄は織り上がってから「宿水(しゅくすい)」(特別な水)に晒す。
糸の染め方・織り方は代々の秘伝として各家に伝わり、布の精粗・上下を見分ける商人の俚言(業界の専門用語)も発達していた。
越後の生活:越後では十月から三月は雪が深く、大道の往来も屋根を伝って行くほど。その閉じ込められた長い冬の間を利用して、女性たちが丁寧に糸を績み、布を織った。雪国の冬ごもりが日本最高の麻布を生んだのである。
雪の中で日本一の布が生まれるって、まるで逆転の発想だワン!夕暮れから夜中にかけて女性たちが細い糸をせっせと績む風景、想像するだけで根気強さに頭が下がるワン。越後上布はユネスコ無形文化遺産にも登録されてて、300年経っても「日本一」の評判は変わらなかったんだワン!