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日本山海名産図会 巻五 (3)

越後縮布(えちごちぢみ)
雪の大地が育む日本一の麻布

「日本の布産を一通り見渡すに、奈良・薩摩・越後・能登・上布など国々の特産があるが、なかでも越後縮は日本一と誰しも認めている」──図会はそう断言する。十月から三月まで雪で家が埋まる厳しい豪雪地帯の越後(新潟)で、なぜ日本一の布が生まれたのか。雪が布を晒し、雪の水分が糸を湿らせて細く績むことができる。自然の厳しさが最高の品質を生み出す、逆説の名産がここにある。

越後縮の雪晒しと織布の図

越後の風土と縮布産業

越後国(新潟)は十月ごろから三月まで雪が家を埋め、大道の往来は屋根伝いに行くほどの豪雪地帯。この苛酷な自然条件が逆に最高の布を生む。

奈良・薩摩・越後・能登・上布など各地に名産があるが、越後縮は日本第一の評判を得ている。

「雪晒し(ゆきさらし)」の秘密
織り上がった布を雪の上に広げて晒す「雪晒し」が越後縮の最大の特徴。雪の白さと反射光が布の色を鮮やかにし、雪解け水の湿り気と酸素が漂白・精練の効果をもたらす。これは今でも小千谷縮・越後上布の製造に受け継がれている伝統技法。
苧麻(からむし)栽培と苧績の図

苧麻(からむし)の栽培から績(う)みまで

原料の「苧麻(ちょま・からむし)」は土さえあればどこでも栽培できる。大麻は楓の葉のようで、苧麻は桐の葉に似て大きく、両者は生・乾・種ともまったく異なる植物。苧麻は生のうちに麻績(おみ)師が作業する。

苧引き(おびき)の工程:一尺ほどの束になった苧麻の皮を水に漬け、「苧引き小刀」の刃裏に引っ掛けて皮を剥ぎ、表裏に引いてさらに細く剥ぐ。これを「苧績(おうみ)」と呼び、各地の麻農家の女たちが夕暮れ時から夜にかけて行う仕事。細くて長い糸が得られるほど上等な布ができる。

紡ぎ:上手な者は「肺車(はいしゃ)」という糸車を使い、女一人の手力の三倍の仕事ができる。

染色・織り・仕上げ

染色:京都の染め方と変わらない。縞(しま)柄は織り上がってから「宿水(しゅくすい)」(特別な水)に晒す。

糸の染め方・織り方は代々の秘伝として各家に伝わり、布の精粗・上下を見分ける商人の俚言(業界の専門用語)も発達していた。

越後の生活:越後では十月から三月は雪が深く、大道の往来も屋根を伝って行くほど。その閉じ込められた長い冬の間を利用して、女性たちが丁寧に糸を績み、布を織った。雪国の冬ごもりが日本最高の麻布を生んだのである。

奈良・薩摩・越後・能登・上布──江戸時代の名産布を並べても、「越後縮(えちごちぢみ)日本一」は誰もが認めるところだった。ユネスコ無形文化遺産にも登録された越後上布・小千谷縮は、この江戸時代の記録の通りの評価を今も守り続けている。

越後縮・小千谷縮を現代に

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

雪の中で日本一の布が生まれるって、まるで逆転の発想だワン!夕暮れから夜中にかけて女性たちが細い糸をせっせと績む風景、想像するだけで根気強さに頭が下がるワン。越後上布はユネスコ無形文化遺産にも登録されてて、300年経っても「日本一」の評判は変わらなかったんだワン!