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日本山海名産図会 巻四 (2)

生海鼠・海膽
なまこ・このわた・うに

「穀物の珍、賞すべき物なり」と図会が称えた海鼠(なまこ)と、「塩辛中の第一」と謳われた海膽(うに)。どちらも江戸時代から高級食材・輸出品として珍重され、特に海鼠腸(このわた)は能登特産として中国(清国)への輸出品にもなっていた。乾燥させた「熬海鼠(いりなまこ)」が「海参(ハイシェン)」として中国医学に用いられた歴史は、日本の水産品が国際商品だった証でもある。

海鼠漁と沖取りの図

生海鼠(なまこ):珍味の代名詞

東国では尾張・和田・三河・豊島、関東では相模・三浦・武蔵・金沢、西国では讃州(香川)小豆島に最も多く、北国各地でもとれる。

中国(清国)では非常に珍しいため偽物も出回るほど。清国の使節・商人が大量に買い求めて持ち帰るのは、小児の虚弱体質に人参のように効く薬(「海参」)として重宝されるからだ。

奥州金花山産のものは形が丸く色が黄白で、腹中に砂金を含むため「金海鼠(きんなまこ)」と呼ばれる珍品だった。

「油で透かして視る」海底観察法
海底の岩に張り付いたなまこをとるには、熬海鼠の汁または鯨の油を水面に垂らすと、油膜が海面を静めて水中が鏡のように透けて見えるようになる。そこを「撹きぐわ(攪拌網)」でさらうという、江戸時代の水中観察技術。
熬海鼠の加工図

熬海鼠(いりなまこ):一晩で再生する不思議な加工

腹の中の三条の腸を取り除き、数百個を空の鍋に入れて強火で一日煮る。すると塩分を含む汁が自然に出て黒く焦げ、硬く干からびて形が小さくなる。

ここが不思議なところで、さらに一晩煮ると再び少し大きくなる。これを取り出して冷まし、糸でつなぎ干す。または竹に刺したものを「串海鼠(くしなまこ)」、大きなものを藤のつるに括り吊るす方法(越後式)もある。

小豆島産は大型で味がよく、薩摩・筑前・豊前・豊後産は極めて小さい。

海鼠腸(このわた):能登の黄金色の宝

黄色く光り琥珀のようなものが上品。黒みが混じるものは下品。日向きに向けて頻繁にかき混ぜると色が鮮やかな黄色になる、という技も記されている。

鶏卵の黄身を一つ入れてかき混ぜると最も美味しくなるという秘伝も。

能登・尾張・三河でのみ純粋な黄色のものが産出され、他の地域では色が混じってしまう。そのため純粋な黄色の海鼠腸は非常に希少な珍品だった。古くは献上品でもあったという。

「黄色に光り有て琥珀のごとき物を上品とす」──このわたの美しさは、まさに海の琥珀と称される所以である。

海膽(うに):越前・薩摩の塩辛最高峰

「塩辛中の第一」とされた海膽。殻は丸くみかんのような形、刺が多く栗のいがに似ている。住吉・二見などの浜では刺を削って子供のおもちゃにしたというほど身近な貝だった。

産地と品質:多くの島々でとれるが、越前・薩摩産が名品。大村・五島・平戸産を上品とする。薩摩・島津の紫黄色のものはなめらかで香気が特に優れる。越前産は粒立ちがよく艶も他に勝る。

また他の料理に使うと「味噌に代わる格別の雅味あり」とあり、焼きうに・うに田楽なども記録されている。現代のウニ料理の原型がここに見られる。

漁法:海女が干潟で岩の間を探し、即座に肉をとって殻を捨て洗って桶に入れる。亭長(漁業組合長)に届けると塩と合わせて販売する。

「ウニ」の語源
「ウニ」は「海膽(かいたん)」が転じたもの。また「兜貝(かぶとがい)」という別種も同じ仲間に属するが、別の生き物だとある。

能登・越前・薩摩の珍味を現代に

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

なまこを中国に輸出していたなんて知らなかったワン!「一晩煮るとなぜか大きくなる」不思議な加工の謎も、今の科学ならきっと解き明かせるはずだワン。能登の黄金色のこのわた、一度食べてみたいワン!