江戸時代の山里には、現代では思いもよらない「薬」の知恵が息づいていました。笹原を跳ねる「山蛤(アカガエル)」、そして野生のブドウに瓜二つの蔓の中に潜む「蓼真蟲(たでのしんむし)」。どちらも子供の健康を守る名産品として、図会に詳しく記されています。
山城の峡谷や丹波・播州佐用の山から多く産出される山蛤は、笹原や茅原の隅に生息します。手足が非常に長く、目は扇の要に似た形をしており、普通の蛙とは一線を画す風貌です。
捕獲には小さな網を用いるか、「唐網」と呼ばれる籠型の網の頭を両手で独楽のように回転させ、三尺四方に広げて一気に押さえる熟練の技が使われました。
「蓼真蟲」は、野生のブドウ(エビヅル)に瓜二つの植物の蔓の中に潜む白い虫のことです。山城国の鷹ヶ峰で採れるものが最上品とされました。三月に黄白色の小花穂をつけ、七・八月に薄紫の小さな丸い実を結びます。蔓に所々ぷっくりと膨らんだ箇所があり、その中に白い虫が潜んでいます。
これを「小児の疳を治する薬」として枝ごと切って市中で売りました。和漢の書物には前例のない記述ながら、図会はその薬効を高く評価しています。
カエルさんの干物が「桃色のサテン」みたいに綺麗だなんて、ちょっと意外だワン!蔓の中にいる虫さんまで薬にするなんて、昔の人は山の隅々まで本当によく観察していたんだね。そして中国の本草綱目の記述を「国が違うから違うかもね」とちゃんと疑ってみせる著者の目も、ほえ〜!だワン。