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日本山海名産図会 巻二 (6)

山の薬箱:山蛤(アカガエル)と蓼真蟲

江戸時代の山里には、現代では思いもよらない「薬」の知恵が息づいていました。笹原を跳ねる「山蛤(アカガエル)」、そして野生のブドウに瓜二つの蔓の中に潜む「蓼真蟲(たでのしんむし)」。どちらも子供の健康を守る名産品として、図会に詳しく記されています。

山蛤の捕獲風景

山蛤(アカガエル):桃色に輝く笹原の恵み

山城の峡谷や丹波・播州佐用の山から多く産出される山蛤は、笹原や茅原の隅に生息します。手足が非常に長く、目は扇の要に似た形をしており、普通の蛙とは一線を画す風貌です。

捕獲には小さな網を用いるか、「唐網」と呼ばれる籠型の網の頭を両手で独楽のように回転させ、三尺四方に広げて一気に押さえる熟練の技が使われました。

「桃色のサテン」──偽物が出回るほどの人気
捕らえた山蛤は内臓を抜いて干物に仕上げます。乾燥した身は「桃色の繻子(さてん)のごとし」と形容されるほど美しく、子供の疳(かん)や滋養強壮の薬として広く求められました。しかし当時から偽物が多く出回るほどの人気品であったと図会は記録しています。
本草綱目に「山蛤は蝦蟆より大きく色黄なり」とあるが、日本の山蛤とは様子が違う──図会は「国を異にするゆえもあるか」と、中国と日本で生息種が異なる可能性を冷静に指摘しています。

蓼真蟲(たでのしんむし):蔓の中に眠る守り神

「蓼真蟲」は、野生のブドウ(エビヅル)に瓜二つの植物の蔓の中に潜む白い虫のことです。山城国の鷹ヶ峰で採れるものが最上品とされました。三月に黄白色の小花穂をつけ、七・八月に薄紫の小さな丸い実を結びます。蔓に所々ぷっくりと膨らんだ箇所があり、その中に白い虫が潜んでいます。

これを「小児の疳を治する薬」として枝ごと切って市中で売りました。和漢の書物には前例のない記述ながら、図会はその薬効を高く評価しています。

「柳の虫や常山の虫よりも優れている」──他の和漢の書には見られない独自の評価。著者がこの植物を実際に観察・研究した証拠ともいえます。
虫だけじゃない──植物本体の三つの使い道
①奈良では実を採って芯を除き、煎じ詰めて練り物のように食用とする。②葉の裏の毛を乾かして揉むと艾綿(もぐさ)のようになり、疣(いぼ)を治す「イボ落とし」として使う。③中国の唐詩に詠まれた「葡萄の美酒」の原料はこの植物ではないかとも言われ、古くから人と深く関わってきました。

山野の自然薬・薬草を現代に

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

カエルさんの干物が「桃色のサテン」みたいに綺麗だなんて、ちょっと意外だワン!蔓の中にいる虫さんまで薬にするなんて、昔の人は山の隅々まで本当によく観察していたんだね。そして中国の本草綱目の記述を「国が違うから違うかもね」とちゃんと疑ってみせる著者の目も、ほえ〜!だワン。