葛は、古くから日本の山野に自生する蔓性の植物です。その根を食用としたものは「葛根(かっこん)」、粉末に精製されたものは「葛粉」と呼ばれます。図会によれば、大和の吉野産が最上品とされ、現在は肥前(佐賀・長崎)の「八郎大夫」という品も一切の混ぜ物をしない美味として賞用されています。
蔓、葉、根、花、皮……。葛はそのすべてが余すところなく民生に役立ち、人々の生活を助ける功績は「五穀に次ぐものである」とまで称賛されてきました。今回は、その奥深い文化と製法を紐解いていきましょう。
葛の葉はフジマメに似て、三枚が一箇所から生じる独特の形をしています。七月頃には赤紫色の花が藤のように房となって垂れ下がり、三寸ほどの毛に覆われた鞘(さや)を結びます。
葛粉の精製は、厳しい冬の仕事です。掘り出された根を石の盤で叩き潰して汁を除き、金属の杵(きね)で細かく砕いて何度も水に晒します。底に沈殿した真っ白な粉を盆に盛り、日光で丁寧に乾燥させることで、ようやく市場へと出荷されます。
葛の功績は食だけにとどまりません。蔓(つる)を水に浸して皮を除き、その繊維を綯(な)って器としたものが、近江の水口などで作られる「葛籠(つづら)」です。これは蔓を連ねたという意味からその名がつきました。
また、蔓を煮て麻のように裂き、紡いで織った「葛布(くずふ)」は、古くから表着の材料として用いられてきました。私たちが「葛衣(くずぎぬ)」と呼ぶ衣服は、まさにこの葛の布から作られているのです。
葛粉の使い道は驚くほど多岐にわたります。餅や麺の材料、白粉(おしろい)の混ぜ物、糊、さらには料理の調味など、日々の暮らしのあらゆる場面で益をもたらします。
ワラビの根からも同様に粉を作ることができますが、品位としては葛に一歩譲ります。しかし、飢えを救う力は比類なく、古の賢者である伯夷(はくい)・叔斉(しゅくせい)が首陽山に隠棲した際も、これによって命を繋いだと伝えられています。
本物の葛粉は、現在も変わらず「純粋さ」が命です。かつては生麩などを加えた偽物もありましたが、混じりけのない吉野葛の滑らかさと味わいは、今なお日本の食文化の至宝とされています。
「葛って、食べ物だけじゃなくて、お洋服やカゴにもなるなんて、本当にスーパー植物だワン!冬の冷たいお水で何度も何度も晒して作られるから、あんなに綺麗で真っ白な粉になるんだね。昔の人の根気に、ほえ〜!だワン!」