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日本山海名産図会 巻二 (3)

蜂蜜(はちみつ):百花の精、養蜂の妙技

蜂蜜は、別名を「百花精」あるいは「百花蕊(ひゃっかずい)」と呼ばれます。図会によれば、諸国で産出されるなかでも紀州熊野が第一の産地とされ、芸州(広島)がこれに次ぎます。ほかにも勢州、尾州、土州など多くの地で名産として知られてきました。

一方、当時から「舶来品(中国等)」も流通していましたが、砂糖を原料とした偽物が多いと警告されています。和産の真の蜜を煎じれば、その香りに誘われて自然と蜂が集まりますが、偽物には決して集まらないといいます。本物だけが持つ、大地の花の生命力がそこには宿っているのです。

山、木、石……環境が育む蜜の個性

養蜂の様子

蜂蜜は、蜂が冬籠りの食料として夏の間に「蜂脾(ほうひ:巣)」の中に貯えたものです。その採取場所によって呼び名と価値が変わります。

製法においても、炎天下で自然に溶け落ちた純度の高い「たれ蜜(生蜜)」を上位とし、巣を潰して火にかけ、蜂の子ごと煎じ絞った「絞り蜜」と区別されています。

伝承の規矩:蜂を導く箱の設計

野生の蜂を呼び寄せるには、酒や砂糖水を塗った桶や箱を野生の巣の近くに置きます。自然に移り住んだのを見計らって軒下へ持ち帰り、大切に飼育するのです。

九州地方に伝わる秘伝では、巣箱の寸法は「九寸(約27cm)四方、長さ二尺九寸(約88cm)」の縦長と厳格に定められています。香りの強い木を避け、松の古木を用いるのが鉄則です。蜜の重みで箱が壊れぬよう縄で頑丈に固定し、出入口の隙間は「高さ一分八厘(約5mm)」に抑えます。この穴が少しでも広いと、天敵の山蜂が侵入して蜜蜂を殺戮してしまうため、細心の注意が払われます。

厳格なる蜂の王国:軍令と行幸

巣の内側は柘榴(ざくろ)の膜のように六角形の孔が並び、酒を醸すように蜜が熟成されます。その小さな巣の中には、驚くほど厳格な社会組織が存在しています。

中心には一匹の「蜂王(女王蜂)」が鎮座し、群蜂が交代で蜜を献上します。入り口には十匹ほどの「細工職人(門番)」が立ち、花を持たずに戻る怠け者がいれば厳しく責め立てます。度重なる怠慢には「刺し殺す」という過酷な軍令が執行されるといいます。

王の子が育ち、群れの半分を引き連れて新天地へ向かう「分巣(蜂わかれ)」の様子は、あたかも天子の行幸のような厳かさです。もし王の行列を裏切り、元の巣へ帰ろうとする「不忠な蜂」がいれば、仲間がこれを処刑して規律を正します。その情景は、見る者が涙を禁じ得ないほどに峻烈なものです。

採取の知恵と会津蝋の効能

蜜の収穫は蕎麦の花がしぼむ頃、最も熟成した時期に行われます。巣をすべて奪うのではなく、三分の二だけを切り取るのが職人の作法です。残りの三分の一を温存することで、蜂は再び巣を修復し、末長く蜜を恵んでくれるのです。

また、副産物である「蜜蝋」も欠かせない名産品です。なかでも奥州会津の「虫白蝋(会津蝋)」は、イボクラヒという虫を水蝋樹に放して作らせる極上品です。

山海の至宝をお手元に

紀州熊野の伝統を継ぐ蜂蜜や、暮らしを整える蜜蝋など、本物の品々をご紹介いたします。

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

「蜂さんの世界にも王様がいて、サボる者には厳しい掟があるなんて驚きだワン!門番さんに怒られないように、みんな一生懸命お花を運んでいる姿を想像すると、ひとしずくの蜜がとっても大切に思えるワン!」