前項「蜜蝋」は蜂の巣から得られる蝋でしたが、奥州会津には、まったく別の生き物が作る蝋がありました。本草の書に「虫白蝋」と記される「会津蝋」です。
※この項目には、原典に対応する挿絵がありません(本文のみの記載です)。
会津蝋は、「イボクラヒ」という虫を「水蝋樹(いぼたのき)」という木の上に放し飼いにすることで得られます。この虫が自然に枝の間に蝋を生じさせ、その色は至って白いのが特徴です。イボクラヒという虫は奥州にのみ生息し、他国には見られないため、その詳しい形は分からないとされています。
水蝋樹という木は各地に多く見られます。葉は柊(ひいらぎ)に似て小さく、夏には枝の先ごとに小さな白い花を開き、花のあとに実を結びます。実は熟すと色が黒くなり、鼠の糞のような形になります。冬には葉が落ちます。
ただし、当時から蝋屋で売られる「会津蝋」と称する品には真偽の定かでないものも多かったと図会は記しています。他国で「白蝋」と呼ばれるものの多くは、漆の木などの蝋を日にさらして白くしたものであり、また薬店で外用に使われる「子白蝋」も、実際には蜜蝋を日にさらしたものにすぎず、いずれも本物の会津蝋とは別物だと注意が促されています。
「同じ『蝋』でも、蜂の巣から採るものと虫が木の枝に作るものがあるなんて知らなかったワン!しかも会津にしかいない虫だから、正体もよく分からないなんて、ちょっと神秘的だワン!」