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日本山海名物図会 巻五

カマスゴ・鰯・赤エイと海鼠

大規模な集団漁を記録する三章。四艘が連携してカマスゴ(いかなご)を追い込む組織漁と、煎じて油を採る産業利用。一里四方の大網で鰯を囲む大漁時の光景。そして舟の縁を叩くと浮き出る赤エイ、鯨の油を海に垂らすと海底まで見える不思議——海鼠(なまこ)漁の知恵。

カマスゴ漁の図

カマスゴ(いかなご)——四艘連携の組織漁と油の採取

「カマスゴ」とは「カマス」という魚の子(稚魚)である。「いかなご」とも言う。摂津(兵庫県・大阪府)尼崎・兵庫の浦で多く取れる。これを取る網を「すべあみ」と言う。外回りは索(なわ)で、次は藁蕊(わらしべ)で編み、真中は苧綱(おなわ)で作られている。釣り手が十筋、人数は十四人。「巻き網」と「逆き網」とで網舟が二艘あり、外に舟が二艘つく。四艘の舟にもやい(繋ぎ綱)をつけて四方を取り廻して網を入れる。

カマスゴを煎じて油を取り、その煎じがらを市に出して「カマスゴ」として売る。

「いかなご」(玉筋魚)は現在も兵庫県・大阪湾で春を告げる風物詩として知られる。「いかなごの釘煮」は神戸・阪神間の春の名物として今日も受け継がれている。江戸時代には油を採る産業的価値も高かった。
鰯網漁の図

鰯漁——一里四方の大網を引く大規模漁

鰯の網は大小二種類ある。大きいものを「巻き網(まかせ)」といい、小さいものを「八知(はちだ)」という。この二種の網を一里四方に引く。その「受け(あば)」を沖程に舟二艘つけて、網が一箇所に寄らないように両方で鉤(かぎ)で引く。網舟の先に立つ舟は「巻き網」「逆き網」の二艘で、その舟に「剣棒(けんぼう)」といって鰯が逃げないように後へ追う者が四、五人いる。

伊予(愛媛県)の宇和島は鰯が多い。関東では総州(千葉県)銚子浦から多く出る。丹後(京都府北部)から出る鰯も名物で、風味が良い。

赤エイ・海鼠漁の図

赤エイと海鼠——油で海底まで透かす知恵

「赤鱚(あかぎす)」とも書く赤エイを取るには、漁人が舟に乗って舟腹を叩くとエイが多く浮き上がってくる。これを銛(もり)で突いて取る。エイの尾で人を刺されると即時に死ぬとも言われている。これに棒綱(ぼうづな)をつけてよく防ぐと良い。

海鼠(なまこ)は正字では「鹿子(しかこ)」とも書く。漢人はこれを取るには「くじらの油(鯨油)」を猪口(ちょく)に入れて、こよりにつけて海へ入れると、海水が底まで見えるほど透明になる。その時、長い「掻い玉(かいだま)」で掬い取る。掻い玉とは桐の木に綱を付けたものである。

鯨油を少量海面に垂らすと波が静まり、海底が見やすくなる——これは「油で表面張力を変化させる」現象で、今日の科学で証明できる事実である。江戸時代の漁師が経験則としてこの知恵を活用していたことは驚くべきことである。

摂津・瀬戸内の海の恵み

いかなご・鰯・海鼠——日本の海産物の豊かさ

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

「クジラ油を海に垂らすと海底まで透き通って見えるようになるって、昔の漁師さんはすごい発見をしてたんだワン!赤エイの尾の棘に刺されると即死って、昔の人も危険な海の生き物を知ってたんだワン!」