四つの名産が一章に集まる。湯治客の土産として有名な有馬(兵庫県)の竹籠細工。麻布の最高品質として「南都御菩薩」の朱印で品質保証される奈良晒。近江・美濃の伊吹山から採れる名品のもぐさ。そして河内(大阪府)小山の渋うちわ。
摂津国(兵庫県)有馬は日本第一の温泉であり、四季を通じて湯治の人が多く繁昌している。この場所の人々は竹細工に妙を得ており、さまざまな竹籠を作り出す。「有馬籠(ありまかご)」として名物となっており、湯治の人々が買い求めて都へのみやげとする。
駿河(静岡県)の府中(静岡市)もまた竹籠の名物で、その細工が良く有馬細工に劣らない。関東の人々は有馬籠の名を知らず、駿河籠を賞翫している。
麻の最上は南都(奈良)である。近国より多くの品が出るが、染めて色が良く、大様に晒(さら)し、着て体にまとわりつかず、汗をはじくため「奈良晒(ならざらし)」として珍重される。
極の字の漆判(うるしはん)は、生平(きびら・生地)のときの改め印(検査印)である。晒し上げての改め印は「南都御菩薩(なんとごぼさつ)」の文字と「尺巾一尺一寸・長六丈七尺五寸」の朱印がある。また四尺切りを取ってあまり五丈四尺。また「木津晒(きづさらし)」は奈良と同じだが、深くて地がやわらかく、着心は奈良ほど爽やかではない。
伊吹山は近江(滋賀県)と美濃(岐阜県)の両国にかかる大山である。ここから和蘭(よもぎ)が多く出るが、中でも「もぐさ(艾草)」が名物である。古くから和歌にも詠まれている。余国のよもぎより茎が太く、その長さは麻のようである。
山下の民家がこれを刈り取って、よく搗(つ)き、揉み抜いて「もぐさ」として売る。その白さは雪のようである。「只たのめ、しめじが原のさしもぐさ、我世の中にあらんかぎりは」——下野国(栃木県)日光山のふもと標地原の艾もまた名物として歌によまれている。
柄は丸竹の渋うちわで、大小さまざまある。名物として貴人・高家にも召し上げられ、また農・工・商の人々にも賞翫される団扇である。大和(奈良県)奈良の団扇もまた名物で、小山は強さを専とし、奈良は花やか(華やかさ)を第一とする。その他、東大坂にもこの細工が多い。また肥前小城(佐賀県)の扇も名物で、六月十五日の祇園祭があり、参詣の人が必ずみやげに買う。
「奈良晒には『南都御菩薩』って朱印が押される品質保証システムがあったんだワン!江戸時代にもブランド認証みたいな仕組みがあったなんてびっくりだワン。伊吹のもぐさ、万葉集にも詠まれてるって歴史が深すぎワン!」