牛の口に米を含ませることで売買が成立する、独特の習慣を持つ天王寺牛市の賑わいを記録する。
安路(播磨・阿波)の国などで牛を育てて子を産ませ、その子を大坂の天王寺に送る。天王寺の「孫右衛門」という者が牛市の頭(つかさ)である。この者の印形(いんぎょう・印鑑)がなければ諸国に売買することが叶わない。
年中、備前・備中(岡山県)より牛を引いてくることが日々絶えない。毎年霜月(11月)に牛市があり、遠方の百姓が思い思いに牛を引いてきて互いに交易・売買する。これを「牛博労(うしばくろう)」という。牛の商いで直段(値段)が定まる時は、互いに牛に米を口にかませる。これを売買の証拠とするのである。
「牛の口に米を含ませて取引成立の証にするなんて、面白い風習だワン!孫右衛門さんの印がないと売買できないルールも、当時の市場の仕組みがよくわかるワン!」