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日本山海名物図会 巻三

漆・平野飴・天王寺かぶら

三つの異なる名産を一章に収める。木に傷をつけて採る漆の採取法と胡桃油による保存の知恵。もち米と麦芽から作る摂津平野の飴と、薬にもなる地黄煎。そして干し蕪にして三ヶ津(大坂・京・江戸)へ送り出される天王寺かぶら。

漆製法の図

漆の採取——胡桃油を混ぜて品質を保つ

漆の木に鎌で切り目をつけると、その切り目から汁が吹き出る。竹ベラでこそげ取り、器に受ける。その際、茶の濃い煎じ汁と胡桃の油を加えて、その上へ漆をこそげ入れると、漆が焼けずに保てるという。

採取するには、細い木は汁が少なく、また格別の老木も悪い。大和国(奈良県)吉野・紀州(和歌山県)熊野が漆の名所である。その他諸国からも多く出る。漆の木の実は、取って獲物(肥料や灯油の原料)にする。

漆は採取から加工、塗布まで非常に手のかかる素材だが、その艶と堅牢さは他の塗料の追随を許さない。吉野・熊野の漆は今日も「大和漆」「紀州漆」として重要な産地であり、江戸時代から続く採取の伝統が受け継がれている。
平野飴の図

平野飴——もち米と大麦の芽から作る薬用の甘さ

摂津国(大阪府)大坂天王寺の東・平野の町より出る飴は名物である。風味が良く、小児に用いて毒がなく、薬の「地黄煎(じおうせん)」にもなる。

飴の製法は、もち米をこわめしに蒸し、米一斗に水一斗の割合で強めしを水につけておく。大麦のもやしの粉を米一斗に六合の割合で右のめしに振りかけ、棒でよく搗き混ぜる。翌日布袋でこれを絞り、釜に入れてぬるい火で煮詰める。煮詰め前のものが「しるあめ(水飴)」であり、煮詰めたものを「地黄煎(じおうせん)」という。

「地黄煎」は地黄(ジオウ)という薬草を煎じた薬と飴を合わせたもので、滋養強壮・疲労回復に用いられた。もち米と麦芽の酵素による糖化という製法は、今日の水飴・麦芽糖と同じ原理である。
天王寺かぶらの図

天王寺かぶら——竹垣に干して三ヶ津へ出荷

摂津国東成郡天王寺領内の蕪(かぶら)は名産である。百姓が多くかぶらを植えて、生のままでも市に出す。また「干しかぶら」として売ることもある。師走(12月)より正月までの間は竹垣を高く作って干すのである。

この近所の木津・今宮という辺りも専ら干し蕪を出す。今宮のかぶらは真丸く、天王寺は少し細長い。木津・今宮のかぶらは天王寺のかぶらには及ばない。

天王寺蕪(てんのうじかぶ)は今日も大阪の伝統野菜として知られる。江戸時代には三ヶ津(大坂・京都・江戸)へ送り出されるほどの名物だった。現在は「なにわの伝統野菜」として復活が図られている。

大和・摂津の伝統素材

漆・飴・蕪——日本の食と工芸を支えた名産品

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

「漆を採る時に胡桃の油を混ぜておくと変質しないって、昔の人の知恵は化学的にも合理的なんだワン!飴が薬になるって、江戸時代の食べ物は薬と隣り合わせだったんだね。なんか深いワン!」