讃岐(香川県)の海に棲む「平家蟹」は甲羅に人の顔が浮かぶ不思議な蟹として名高い。著者は俗説を冷静に検証し、この蟹が諸国に存在することを指摘する。一方、茶の湯で最高とされる摂津池田の炭は、蓋をするタイミングが命の精密な職人技で生み出される。
讃岐(香川県)に「平家蟹(へいけがに)」という蟹がある。蟹の甲羅に目・鼻・口があり、人の顔のようである。俗説によれば、壇ノ浦の戦いで源九郎義経に攻め滅ぼされた平家の一門が、讃岐国八島の浦でその怨念を蟹となったものだとして「平家蟹」と呼ばれている。
著者が考察するに、この類の蟹は諸国にある。摂津の尼崎には「武文蟹(ぶもんがに)」と呼ばれるものがあり、その武文の怨念だというものもある。また「島村蟹(しまむらがに)」というものもある。豊後・長門には「清経蟹(きよつねがに)」と呼ぶものがある。これらはみな俗説である。中国(唐)にも「楽毅蟹(がっきがに)」といってこの蟹があるというから、単なる俗説に過ぎないことがわかる。
摂津国(兵庫県・大阪府)池田の炭は、一倉(ひとくら)という里で焼かれて池田の市に出荷される。この炭窯は地面を掘ってその上に室(むろ)を作り、先に口を開けて中にコナラ(くぬ木)を積み入れて焼く。焼き加減を見て蓋をするのである。
蓋が遅ければ炭が損じて悪くなり、また早ければくすぼって(煙くなって)悪くなる。とにかく蓋のかげん(タイミング)が大事である。焼炭は諸国より多く出るというが、池田を最上とする。
「平家蟹の話、著者の平瀬徹斎さんが『これは俗説で中国にも同じ話がある』って冷静に分析してるのが面白いワン!感情的じゃなく学術的に調べる姿勢、江戸時代にもそういう人がいたんだワン!」