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日本山海名物図会 巻三

讃岐の平家蟹と池田炭

讃岐(香川県)の海に棲む「平家蟹」は甲羅に人の顔が浮かぶ不思議な蟹として名高い。著者は俗説を冷静に検証し、この蟹が諸国に存在することを指摘する。一方、茶の湯で最高とされる摂津池田の炭は、蓋をするタイミングが命の精密な職人技で生み出される。

讃岐平家蟹の図

讃岐の平家蟹——甲羅に人面が浮かぶ蟹

讃岐(香川県)に「平家蟹(へいけがに)」という蟹がある。蟹の甲羅に目・鼻・口があり、人の顔のようである。俗説によれば、壇ノ浦の戦いで源九郎義経に攻め滅ぼされた平家の一門が、讃岐国八島の浦でその怨念を蟹となったものだとして「平家蟹」と呼ばれている。

著者が考察するに、この類の蟹は諸国にある。摂津の尼崎には「武文蟹(ぶもんがに)」と呼ばれるものがあり、その武文の怨念だというものもある。また「島村蟹(しまむらがに)」というものもある。豊後・長門には「清経蟹(きよつねがに)」と呼ぶものがある。これらはみな俗説である。中国(唐)にも「楽毅蟹(がっきがに)」といってこの蟹があるというから、単なる俗説に過ぎないことがわかる。

著者・平瀬徹斎はこの記述で、感情的な俗説に流されることなく「諸国にこの蟹がある」という事実を根拠に冷静な考察を行っている。江戸時代にすでに科学的な比較観察の精神があったことを示す興味深い記述である。
池田炭の図

池田炭——蓋のかげんが決め手の茶の湯の最高炭

摂津国(兵庫県・大阪府)池田の炭は、一倉(ひとくら)という里で焼かれて池田の市に出荷される。この炭窯は地面を掘ってその上に室(むろ)を作り、先に口を開けて中にコナラ(くぬ木)を積み入れて焼く。焼き加減を見て蓋をするのである。

蓋が遅ければ炭が損じて悪くなり、また早ければくすぼって(煙くなって)悪くなる。とにかく蓋のかげん(タイミング)が大事である。焼炭は諸国より多く出るというが、池田を最上とする。

池田炭は茶道の世界で「池炭(いけすみ)」として現代でも珍重される。クヌギ(コナラ)を材料にした白炭(はくたん)は火持ちが良く、遠赤外線効果が高い。茶の湯の炭として最高級の評価を受け続けている。

讃岐・摂津の名産

平家蟹の伝説と、茶の湯の名炭——歴史と文化が宿る名品

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ほえまる
ほえまるの「ほえ〜!」コメント

「平家蟹の話、著者の平瀬徹斎さんが『これは俗説で中国にも同じ話がある』って冷静に分析してるのが面白いワン!感情的じゃなく学術的に調べる姿勢、江戸時代にもそういう人がいたんだワン!」