巻二の最後を飾るのは、秋冬の食卓を彩る野菜と果物の名産。一荷に五、六個しか担げないほど巨大な近江の蕪、皮が厚く甘さ格別な紀州の蜜柑、江戸で人気の紀州蜜柑市、そして日本一の風味を誇る尾張大根——各地の土の力が育てた恵みを記録する。
紀伊国(和歌山県)・駿河国(静岡県)・肥後国(熊本県)の八代より出る蜜柑はいずれも名物だが、中でも紀州が最も優れている。皮が厚くて、その味が甘い。京・大坂の市中に売られているものの多くは紀州産である。
山より出荷する際には籠に入れ、風が当たらないように丁寧に詰めて運ぶ。一籠に百入り・二百入り・三百入りがあり、籠の大きさはいずれも同じである。蜜柑の大きなものは数が少なく、割高になる。加賀・越前などの北国では蜜柑の木が育たない。
江戸の市中では多くが駿河から出るものだが、紀州蜜柑も大坂から船便で下るものがある。江戸の四日市(現在の東京都中央区)の広小路では、籠入りの蜜柑が山のように高く積まれ、毎日毎日、売買の商人たちが群集する。
江戸は日本第一の都会として繁昌の地であるから、京・大坂にも勝って賑わっている。
近江(滋賀県)の蕪(かぶら)は甚だ大きい。至って大きなものは、一荷(ひとになえ)に五つ六つしか担ぎ切れないほどである。初めてここに来て見る人は肝をつぶすほどである。余国より出るものはこれほど大きなものはない。
また摂津国の天王寺蕪は名産である。近江蕪のように大きくはないが、その味が優れていて、干し蕪にして三ヶ津(大坂・京都・江戸の三都)へ出荷している。人々がよく知っている名物である。
尾張(愛知県)の大根は甚だ大きく、風味が軽やかで上品である。日本において大根の第一とされるべきものである。江戸の練馬大根も大きさでは尾張大根に劣らないが、風味は尾張よりもはるかに劣っている。
江州(滋賀県)の伊吹大根もまた名物であり、尾張大根に劣らない。また摂津国の倉橋・江口・木津などより出る大根も名物とされている。
「一荷に五、六個しか載らない近江の大蕪、初めて見た人は肝をつぶすって!江戸時代も野菜の品評会みたいな感覚があったんだワン。紀州から海運で江戸まで蜜柑が届くなんて、江戸時代の物流もすごいワン!」