巻一の後半を飾る近畿四大名産。純白の吉野葛から、宇治の清香、清酒の元祖・伊丹酒、そして切れ味抜群の堺庖丁まで。江戸時代の上方文化を代表する逸品が一堂に会する。
大和国(奈良県)吉野の葛粉は、日本一の名物として知られる。葛の根を掘り出し、水にさらして不純物を取り除く「寒晒し(かんざらし)」の工程が、あの雪のような白さを生み出す。
葛は食用の葛粉だけでなく、繊維を取って布や籠の材料にもなる。冬の厳しい吉野の自然が、最高品質の葛粉を育てるのである。
日本に茶を植えることは、後鳥羽院の御代に始まった。栄西和尚が宋(もろこし)から帰朝する際に茶の種を持ち帰り、のちに宇治の地に広まった。
毎年四月に葉を摘み、蒸して、圧搾して干す——その過程はすべて女性の仕事である。幕府御用を務める宇治の御茶師は全部で三十三名おり、上林三家をはじめとする名家が茶を管理した。
宇治茶摘みの名声は遠い国々まで鳴り響いており、他国からわざわざ見物に来る人が絶えず、大変な賑わいとなった。
摂津国伊丹の酒は「醇雄(じゅんゆう)」——品質において他に比べるものがない。幕府から「御免の焼印」の使用を許されており、今や遠方の地方では「諸白」のことを指して単に「伊丹」と呼ぶほど、その名は定着している。
澄んだ「清酒」とする製法が確立されたのは約130年ほど前のこと。文禄・慶長年間(1590年代)に鴻池(山中氏)が江戸で売り出したのが端緒で、江戸の繁栄とともに生産高は飛躍的に増大し、鴻池家は巨万の富を築いた。
和泉国堺(大阪府)の「山上文珠四郎(やまがみもんじゅしろう)」は、庖丁鍛冶の名人である。彼が作る「正銘(本物)」の庖丁は「黒打ち」と呼ばれ、鋼(はがね)の鍛えが良く、切れ味が格別である。
出刃、薄刃、刺身庖丁、また「まる箸(菜箸)」や「たばこ庖丁」など、いずれも名物として知られている。
『荘子』によれば、「庖丁」とはもともと牛をさばくのが非常に上手かった料理人の名前である。その人が使いこなした刃物ということから、ついには刃物の代名詞となった。
「一冊の本に鉱山から始まってお酒に包丁まで!巻一だけでこんなに盛りだくさんとは、ほえ〜!だワン。伊丹の清酒が江戸で大人気になって鴻池さんが大金持ちになった話、ドラマみたいだワン!」